猫のツメ、ときどき腰痛。

偏った物欲と健康への偏愛。ときどき旅。ときどき腰痛。 せまりくる高齢化社会を笑いながら生き抜くための情報発信ブログ。

猛暑とコロナ!読書に篭るなら柚月裕子と沼田まほかる

猛暑とコロナで外に出る気も失せる毎日。東京人は県外にも出ちゃいけない自粛ムードで、どこにも行けず夏休みもあったもんじゃない。しかし家で腐ってばかりではもったいない。
こういう時こそ、日頃なかなかできない、”クーラーの効いた部屋で読書”!
シエスタ気分で世の中の憂いを忘れるひと時があってもいい。
 
PCやスマホのデジタルライフからも少し離れて、ソファやベッドでゴロゴロ横になってアナログに文庫本を読みふける生活こそ、コロナ時代の贅沢なニューノーマルなのでは!?
 
そんな中で、最近感動した本を少し。
作家は柚月裕子
2016年に『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)受賞。この小説は『彼女がその名を知らない鳥たち』『凶悪」『日本で一番悪い奴ら』の白石和彌監督メガホンのもと、役所広司松坂桃李江口洋介などの名優揃いで2018年に映画化されている。
そのほかの代表作として、テレビ朝日系でドラマ化された『最後の証人』『検事の本懐』を含む「佐方貞人シリーズ」。
 
今まで気になっていてなかなか読む時間がなかったので、この機会にまずこの「佐方貞人シリーズ」から読んでみた。
検事時代のストーリー:『検事の本懐』(第15回大藪春彦賞を受賞)『検事の死命』  ※『検事の信義』(まだ文庫化されていない)
検事から弁護士に転身した時代:『最後の証人
 
刊行は『最後の証人』が先だが、時系列にこだわるなら『検事の本懐』⇒『検事の死命』⇒『最後の証人』の順で読んだ方がいいかも。
法曹ドラマとか法廷ミステリ・サスペンスいうと、ちょっと苦手意識を持つ女性もいるかもしれないが、不器用でまっとう過ぎる佐方の人間的魅力についつい引き込まれる、人間ドラマ的要素の方が強い。弁護士だった父親の話には思わず涙が、、、夜寝る前に読み出すと、なかなか止められなくなり、寝不足に。そして読み終わった後に、「いいもん読ませていただきました」感がパンパないので、かなり覚悟を決めてから読み始めた方がいい。
 
ドラマでは上川隆也が佐方役だったらしいけど、ちょっとイメージとは違うかなあ。。あまりイケメンのイメージではなかったのだが。
 
そして驚いたのが『孤狼の血』。
広島の暴力団抗争を舞台にした警察(マル暴)小説。
何が驚いたって、作家の柚月裕子は1968年生まれの女性作家であるにもかかわらず、この骨太な男だらけのヤクザ社会の抗争やマル暴の姿を見事に描き切っているから。読んでいる間、作家は確実に男だと思わせるような男臭さをプンプン放っているのである。え?女性だったっけ?この人、何者?父親が極道だったとか?笑、、
原点は『仁義なき戦い』言われているこの小説、女性にはちょっと、思う人もいるかもしれないが、どんどん主人公の大上刑事に惹かれていくのは間違いない。
 
これ、なかなか面白かったので、映画も配信で観てみた。普通、小説を読んだ後に映画を見るとちょっと残念感が否めないもの。だがさすが白石和彌監督の成せる技なのか、バイオレンスシーンもさることながら、妥協なしの演出は小説と全く遜色ないというか、いや、小説よりも主人公がずっと魅力的に描かれていた。そのマル暴刑事を演じた役所広司によるところも大きいし、松坂桃李もなかなかのものだった(真木よう子だけがちょっと残念)ので、観応えも抜群である。
ちなみに続編『凶犬の眼』は映画の松坂桃李の印象が強かったせいか、勝手に彼の姿を主人公に重ねて読んでしまった。
暴虎の牙』はこれから楽しむつもり。
 
ところで白石和彌監督の作品に『彼女がその名を知らない鳥たち』(蒼井優、阿部サダヲ主演)があるが、わたしはこの原作者の沼田まほかるも大好きな作家である。
 
『九月が永遠に続けば』を初めて読んだ時の衝撃というか、あまり読後感の爽やかさなどを期待してはいけない作品で、人間の陰鬱で絶望的な心理にちょっと苦しくなる、その後味の悪さを味わいたい人向け?笑。『彼女がその名を知らない鳥たち』もそうだが、メンヘラ系のイヤミス小説としてはかなり秀逸。
沼田まほかる(1948年生まれ)は主婦、僧侶、建設コンサルタントという経歴の持ち主で、56歳の時に書き上げた『九月が永遠に続けば』が第5回ホラーサスペンス大賞を受賞、その後『猫鳴り』、『アミダサマ』、そして『ユリゴコロ』で第14回大藪春彦賞受賞、これも映画化され、遅咲きながら次々とヒット作を世に出してきた。
 
彼女の経歴を知って、60歳近くになってから作家としてデビューするという、その気概というか生き方にはかなり感動するものがある。確かに人生経験を積んでから作家になるというのは、人生の後半を充実して過ごすのにもとてもいい選択だとも思うけど、それだけ、いい歳して変なものを世に出せないというプレッシャーも半端ないのではないだろうかと思うのである。実際そんなことを気にしてはいないかもしれないが、やはり文体に出るものは隠せないので、どんな形であれ人生を無駄にせず、経験を重ねて行くことによって身に付く人間的趣は大切だなあと、今更ながらに思う。自分も今からでも間に合うだろうか(かなり遅いし絶対ムリ)。
 
柚月裕子沼田まほかる、どちらも読んで損はない素晴らしい大人の女性作家、この猛暑とコロナの夏を彼女らの作品で涼しく過ごすというのも一興である。

 

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