昨年の9月15日に樹木希林さんが75歳で亡くなった。その独特の生き方や発言が今を生きる人たちに勇気を与えているという。
わたしとってはTBSのドラマ『寺内貫太郎一家』(平均視聴率31.3%!)で「ジュリー〜っ!」と悶えながら叫ぶお婆ちゃん姿の彼女(当時31歳!)が鮮明な記憶としてあり、郷ひろみと『林檎殺人事件』を歌いながら踊る姿からいくつもの作品を経て、『東京タワー』のおかん、『海街diary』(是枝裕和監督)の大叔母、その是枝裕和監督の『万引き家族』(第71回カンヌ国際映画祭パルムドール受賞作品!)の祖母役が最後に強烈に焼き付いている。
61歳で乳がんを患い、この頃にはもう全身を癌が蝕んでいて、その身体、精神であの演技。誰も真似できない、誰も彼女のようにはなれない。だけどあの生き方に憧れる人も多いだろう。
引き際の美しさを教えてくれた人。
人間歳をとってくると病気でなくてもどこか調子の悪いことは日常茶飯だし、否が応でも残りの人生を考えてしまう。
それでも彼女は「自分を使い切って死にたい」と精力的に仕事をこなし、病んだ身体で数々の映像を残した。見事な最期だった。
2018年も終わりに差し掛かった12月20日に樹木希林さんの言葉を集めた本が発売されて、瞬く間に入荷待ちになった。
彼女特有の語り口調、言葉に共感し、あやかりたいと思う人がたくさんいるのだろう。わたしとてそのひとりに違いない。
晩年は「老い」や「死」に関する取材依頼がたくさんあったという。
「それは依存症よ、自分で考えてよ」と言ったという彼女の笑い顔が思い浮かぶ。
依存しないこと、あるがままを認めること、俯瞰で見ること。
生きる上で大切な数々の言葉をユーモアを交えて遺してくれたこの本は、わたしのバイブルになった。
「おごらず、他人と比べず、面白がって、平気に生きればいい」
なんて力が湧いてくる言葉だろう。
そして
「モノを持たない、買わないという生活はいいですよ」
「モノがあるとモノに追いかけられます」
わたしは買ったばかりの新しいコートを着て震えながら読んでいた。